9.語学留学


英語をはじめて勉強する日本人が
一番英語を勉強できる国は・・・・
JAPAN!


1.留学してたんですか?

 私は自分の英語は未だにボキャ貧のブロークンだという強い自覚があります。しかし、私の 
つたない英語でも、まったく英会話のトレーニングをやったことのない人が聞くとペラペラに聞こ
えるようです。そんな時決まって最初に聞かれるのが
「どこかに留学してたんですか?」
という質問です。

学生時代には留学どころか海外旅行の経験すらありませんでしたので、
「留学なんてしたことないですよ。」
と正直に言うと、かなり高い確率で不思議そうな顔をされます。時には
「え〜、留学とかしなくてもそんなに喋れるようになるんだー。信じらんな〜い。」
と、頭が痛くなってくるような答えが返ってくることがあります・・・。

 このようなやり取りを何度か経験していく中で感じたのは
「日本にいたのでは英語は話せるようにならない。」
「留学すれば話せるようになる。」
という強い思い込みです。実はこれは高校生の進路指導をしていても時々感じることで、
「卒業後、英語の勉強のために語学留学したい。」
という生徒がでてくるのは、それほど珍しいことではありません。
 さて、本当に「日本にいたのでは英語は話せるようにならず、語学留学すれば話せるように 
なる。」のでしょうか。

※ なお、ここでは「留学」ということがテーマですので「英語の勉強」という言い方をさせていた 
 だきます。
 
 英語を勉強する際にはどうしても必要なもの、あるいは勉強の手助けをしてくれるものがあり
ます。主だったものを挙げると(1)教材や教授法、(2)教師、(3)その他の学習環境・・・といっ
たところでしょうか。これらの全てが日本よりも英語圏の国において優れているのであれば、語
学留学はとても効果的であるということができます。
「留学すれば話せるようになる。」
というのは結局はそのように考えているということですが、実際のところはどうなのでしょうか。


2.教材・教師・学習環境

(1)教材や教授法
 教材や教授法についてはどうでしょう。たとえば英語を勉強する際にはどうしても必要な教材
である辞書について考えてみると、日本では毎年といってもいいくらい多くの新しい辞書が電子
辞書も含めて創られたり、改訂されたりしています。そしてこれらは全て日本人向けに作られ 
たものです。しかし、海外ではどうでしょうか。私は本が好きなので、外国に行ったときも必ずと
いっていいくらい書店に立ち寄ります。英語圏の国もいくつか行きましたが、日本以上に日本 
人向けに創られた辞書が沢山並んでいるのは見たことがありません。

 テキスト等の教材や教授法についてはどうでしょう。日本の英語教育に対する批判のせいで 
しょうか、日本で用いられている教材やそれを用いた英語教授法は役に立たないと思っている
人は多いようです。しかし、これは言われなき偏見以外の何物でもありません。
『2.英語は苦手だったなら』で述べたように、日本の英語の教科書の構成は英語をまったく知
らない日本人が英語を理解するためには非常に優れた構成になっています。実際には多くの
英語の先生方の努力で、日本人が英語を一から学ぶための優れた教材や教授法が研究され
てきているのです。

 海外ではどうでしょう。英語圏の国で出版されているノンネイティブ向けのテキストは日本でも
広く販売されていますが、これら「英語だけで書かれた教材」が、初めて英語を学ぶ日本人に
とって、日本語の解説がはいったテキストよりも適しているとは私にはどうしても思えません。
 また、英語圏の国に「日本人が英語を学ぶための研究」をしている人が何人いるのでしょう 
か。少なくとも日本以上には多くないでしょう。やはり「日本人が英語を学ぶための研究」が世 
界で最も進んでおり、そのための教材・教授法が一番開発されているのは日本であることに疑
いはありません。したがって、教材や教授法に関しては、日本で勉強したほうがメリットが大き
いといえます。

(2)教師
 「留学すれば話せるようになる。」という発想が出てくるもう一つの理由は、「日本人よりもネイ
ティブスピーカーに教えてもらうほうが効果が高い」と考えているということでしょう。実際、ビギ 
ナーの中に「ネイティブ信仰」といえるようなものがあることはよく感じます。また、日本人が気
付きにくい文法的な間違いや、自然な表現を教えてもらえるというネイティブならではの良さも
確かにあります。

 しかし、私達が日本語を外国人に教えることをイメージしてもらえば分かりやすいと思います
が、自分の母国語を体系がまったく異なる言語を母国語にしている人達に教えるというのはと
ても難しく、そのための技術や知識がいります。自分の母国語なら誰にでも何でも教えられる
などというものではないのです。

日本にもネイティブスピーカーは沢山いますが、残念ながら英語を外国語として教えることを専
門に学んできた人はかなり少数派のようです。ネイティブに講師に来てもらっているサークルは
もちろんのこと、英会話スクールでも、さらには大学が行っている一般向けの英語講座でも、
日本人に英語を教えることが上手いなと感じられる人は実際はかなり少数です。
母国語である英語を外国語として教える専門的なトレーニングを受けた人に教わるチャンスは
英語圏の国のほうが多いでしょうから、この点は語学留学のメリットだといえるでしょう。

 一方、英語力そのものではネイティブとは比べ物にならないとはいえ、初めて英語を学ぶ人 
やまだ十分に力をつけていない人にとっては、「日本人がわかりにくいところがわかる」日本人 
教師の力は大きなものです。逆に日本語が殆ど分からない英語のネイティブスピーカーが、英
語が殆ど分からない日本人に教えるというのは、可能であったとしてもかなりロスが大きいで
しょう。このことから、日本で学ぶ際には、まさに「日本人にも教えてもらえること」は大きなメリ
ッ トとなるのではないでしょうか。

 これらのことから、教師について比較してみると、語学留学と日本で学ぶ場合とでは、その人
の現状により一長一短であり、一概にどちらが良いとはいえないように思います。

(3)その他の学習環境
 その他の語学留学のメリットをあげるとすると、「常に英語を使わざるを得ない環境におかれ
る」ということでしょう。実際「留学すれば話せるようになる。」と考えている人は、教材や教授法
よりもこの点が最も大きなメリットだと考えているようです。
 英語をある程度使えるようになるまでに必要な学習時間は2000時間ともいわれています。語
学のトレーニングは習得にどうしても時間がかかります。したがって、寝ているとき以外は全て 
英語で生活するのであれば英語に触れる時間が相当確保できますから、語学留学は効果的 
であるはずです。


3.さて、実際は・・・・

  このように様々な要素を比較してみると、
(1)教材や教授法については、日本で勉強したほうがメリットが大きい。
(2)教師については、その人の現状により一長一短。
(3)その他の学習環境については語学留学のメリットが大きい。

と、まとめることができます。ということは、その他の学習環境、つまり英語に触れる時間が相
当確保できるというメリットをどれくらい生かせるかで、語学留学の成果は変わってくるといえま
す。
 単純に考えると、英語圏の国で生活するんだから、どれくらい生かせるも何も、絶対にこのメ
リットは生きてくるように思えるのですが・・・・実はこれがかなり怪しいのです。

 語学留学では現地の語学学校に入ることになりますが、多くの場合その受講生は日本人が 
かなりの割合をしめているようです。英語を十分に話すことができない日本人が沢山いる授業 
では、どうしても日本語が飛び交うことになり、結局日本の英会話スクールにいるのとあまり変 
わらない状況になってしまうことは容易に想像できます。
 
 学校以外での日常生活はどうでしょうか。英語で十分にコミュニケーションできる能力を既に
持っている人なら現地の人たちと英語で交流を持てるでしょうが、まだ十分に英語を話せない
なら、日常生活での主な交流は地元の人よりも同国人のクラスメート同士にならざるを得ない
でしょう。

  私自身は語学留学の経験はありません。しかし、かなり多くの語学留学経験者から実際に 
そのような話を聞かされました。また、英語圏の国に旅行したときに語学留学中だという日本 
人と話す機会や、その生活ぶりをみることが何度もありました。そこで目にしたのは、生活の 
全てが英語漬けになっているというよりは、日本人同士で一緒に行動しているため、留学とい 
うよりはむしろ海外旅行に来ているといったほうがいいような姿でした。
 
 もちろん、大きな成果をあげて帰ってきた方は私の英語の勉強仲間にも何人もいます。しか 
し、私の知っている方で留学といえる成果をあげて帰ってきたのは

「一切日本語は使わず日本人とも絶対接触しない」あるいは
「留学までしたからには絶対にものにしてやる。」

というくらいの相当の覚悟を決めて現地で過ごされた方や、英語を学ぶための留学ではなく、 
英米の文化や歴史などを学ぶための留学であった方です。


「留学しさえすれば話せるようになる。」
という発想はあまりに短絡的であるように思います。海外で長期間生活すること自体は、それ
だ けでとても意味のあることでしょう。しかし、英語力の向上という点からみれば、ヘタをすると
数百万円の無駄使いになる可能性があるのでは。

「日本にいたのでは英語は話せるようにならない。」
というのも、自分の努力不足の正当化でしかないように思えます。ビギナーからプロのレベル 
まで日本で学べることは沢山あるように思います。現に通訳になりたい人達は日本国内の通 
訳学校に通っているではないですか。

 特に、英語を初めて勉強する人やまだ十分に英語を話せない人には、教材の豊富さや日本 
人教師に教えてもらえるというメリットは、海外で学ぶメリットよりもはるかに大きいと思います。
英語圏の国で英語を学んで意味が有るのは、実は「常に英語を使わざるを得ない環境におか
れる」というメリットを十分に生かせる上級者のみだと思います。

ビギナーは
「日本にいたのでは英語は話せるようにならない。」
のではなく、むしろ
「日本にいたほうが英語は話せるようになる。」
のではないでしょうか。




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