8.英会話と文法


文法は絶対必要です!


1.英会話に文法は必要ない?

 時々「会話には文法は必要ない。」ということを言う人がいます。実際私はそのように主張す 
る人と議論したことがあります。英会話教材や英語学習法の中にも「文法を知らなくても(ある 
いは学ばなくても)英語は話せる。」という宣伝文句を時々見かけます。日本の英語教育に対し
てする「あまりにも細かな文法にこだわりすぎる。」という批判が定番のようになっています。さ 
て、英会話に文法は必要なのでしょうか?

 実は、このような議論はバカバカしくてやってられないというのが正直なところです。英語のプ
ロの方々からも
「何をくだらないことを言っているんだ?」
と言われそうですが、上記のような主張がある以上触れておかざるを得ないでしょう。
それでは最初に結論です。
「文法は絶対に必要です!」
はい、それではこの話はこれでおしまいにします・・・と言いたいところですが、せっかくですので
もう少し。


2.「きみを愛してる!」は"You love !" じゃなくて "I love you !"

「会話には文法は必要ない。」と言っていた人と議論した時、その人はその例として
「文法問題でよく質問される前置詞を間違えても日常会話は問題なく成立する。」
という意味のことを言っておられました。
それはそうかもしれません。しかし、です。「会話には文法は必要ない。」あるいは「文法を知ら
なくても英語は話せる。」などという主張は、ちょっと考えると極論だと言うことがすぐにわかりま
す。

 文法というのは、一般に日本人が苦手にしているような「次の(  )に適する前置詞を記 
せ。」といったようなことばかりではありません。もっと根本的な疑問文や否定文の作り方、ある
いは語順といったものも、まさに文法です。たとえちょっとした日常会話であっても、疑問文や
否定文の作り方、あるいは語順といった非常に根本的な文法さえ知らないで、単語だけで会話
は成立するでしょうか。例えば・・・・・

「きみを愛してる!」と英語で言おうとしたら、"You love !" じゃなくて、やっぱり "I love you !"
でしょ?英語の文法、つまり英語の語順に従って主語+動詞+目的語の順に単語を並べて  
"I love you !"と言わないと通じません。そうでしょ?文句あっか??


3.「文法と単語」は「銃と弾丸」、または「弓と矢」

 私は生物の教師であり、言語学の体系的な勉強はしていないので、以下の例えはおかしい 
のかも知れませんが、「文法と単語」の関係は「銃と弾丸」、または「弓と矢」に置き換えると分 
かりやすいと思います。

 銃(または弓)無しで弾丸(または矢)が相手に届くのは、相手が手を伸ばせば届く距離にい 
るときだけです。具体的には、挨拶表現や買い物での決まり文句など、相手が何をいうのかほ
ぼ推測できるときだけです。少し離れるともう手を伸ばしただけでは相手に弾丸は届きません 
から、それなりの銃が必要になってきます。つまり、相手が何を言うか予想できないようなとき 
には、文法無視で単語を並べるだけではコミュニケーションは不可能でしょう。

 ごく大雑把な言い方をすると、ちょっとした日常会話では複雑な言い方はあまりしませんか 
ら、中学程度の文法で用が足ります。逆に言うと、たとえ会話でも中学程度の文法は必要だと
いうことです。中学程度の文法知識は弾丸を実際に撃つためには最低限必要なピストルであ
る、というところでしょうか。
読み書きの場合は構文が複雑になりますから中学英語だけでは用が足りず、高校レベルの
文法知識が必要になってくると思えばいいかと思います。

「実際に英語を使う機会は殆どないのに、あまりにも細かな文法にこだわりすぎた。その結果 
として多くの人が嫌になって英語の勉強を投げ出してしまった。」という批判は当たっているよう
に思います。先ほどの言い方をするなら、
「実弾を撃つ機会は殆どないのに、ネイティブでないと持ち運びが困難な重い銃を全ての日本 
人に持たせようとしてきた。そのため多くの人が嫌になって弾丸も銃も捨ててしまった。」という 
ことは言えると思います。

 しかし、だからといって、「文法は必要ない。」とか「文法を知らなくても英語は話せる。」などと
いうことは言えないでしょう。
相手との距離が比較的近いときでも、せめてピストルくらいは持っていないと、いくら沢山の弾
丸を持っていても一発も撃てないということが生じてくるかもしれません。そして、相手との距離
が遠いほど、そして正確に的を狙うことが求められるほど、高性能の銃がいります。つまり、ト
ラブルがあったときやビジネスシーンなど、相手が何を主張するか分からないときや、職務で
通訳をおこなう時にはきわめて高性能な銃が、つまり細かいところまで正確な文法が必要とさ
れてくることは間違いありません。




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