2.英語は苦手だったなら


「英語は苦手!」の克服は、
中学英語からの復習が一番の近道

  
1.中学英語は英語の根幹

 英会話に初めてチャレンジをしようとしている学生・社会人の中にも、私と同じように
「実は中学のときから英語はとても苦手だった」
という方がおられると思います。あるいはまた、何度目かのチャレンジをしようとしている方の 
中には
「英語はそう苦手でもなかったのに、あらためて英会話をやってみたら難しく感じて挫折してし 
まった。」
という方もいると思います。このような場合には私は焦らずに思い切って中学1年から復習して
みることを薦めます。 
  
 英語の学習においては、中学で学習する内容は最も重要な基礎といえるものです。ですから
中学段階で英語がわからなくなると、高校あるいは大学レベルのことは間違いなくチンプンカ 
ンプンのままになります。

読み書きに比べて比較的簡単な会話でも、中学程度の文法の知識は必要とされます。ですか
らそれをおろそかにしてしまっては、いきなり会話だけをやろうとしても、訳が分からなくなって
挫折することになってしまいます。

 たとえて言うなら、中学で学習する内容は木の根と幹にあたるものです。これがしっかりして 
いないと枝や葉にあたるリスニング力、スピーキング力あるいは高校・大学レベルの読み書き 
の力も身に付かないし、果実の収穫(英語の習得)などおぼつかないでしょう。逆に、根や幹が
しっかりしていれば、枝葉や果実はつきやすくなります。
 したがって、かつての私と同じように中学以来英語を苦手にしてきた方や、学校を卒業して時
間が経っているため基礎知識があやふやになっていることが英語を難しく感じる原因になって 
いる方は、「中学英語からやり直す」のが実は英語習得の一番の近道だと言えます。


2.中学の教科書がベスト

 では、具体的にどうやって根や幹をしっかりさせていけばいいのでしょうか。いろいろな教材 
や方法があると思いますが、私は「中学の教科書を使って中1の最初から復習する。」
ことを勧めます。
「中学の教科書なんて・・・・」
等と馬鹿にしないでください。中学の教科書というのは、まさに知識の宝庫と言ってもいいくら 
い、英語学習にとって重要な知識のエッセンスになっています。教科書というのは、多くの専門
家によって、さらには教育現場の多くの意見も反映させながら製作・改訂されてきています。そ
のため、英語の教科書というのは、英語をまったく知らない日本人が最初から英語を学ぶため
の非常に優れた体系を持っています。同時に、一度習った英語を忘れてしまった日本人が、も
う一度最初から英語を復習するためには、とても分かりやすいものになっているの 
です。

 私が教員だから言っているのではありません。私は学生時代、英語はとても苦手で、当然大 
嫌いでした。英語の教科書なんて見たくもないほどでした。ですから今でも英語の穴埋め問題 
などを見ると、冗談抜きでゾッとするくらいです。しかし、自分が英語の勉強をやり直そうとして 
様々な教材を探し、そして実際に使ってみたその結果、教科書以上に優れた教材は無いとい 
うのが分かりました。だから、自信を持ってそう言っているのです。
 
また、中1から復習すると言うと、それだけで何年もかかってしまうのでは?と思うかもしれま 
せんが、そんなことはありません。中学の時難しく感じたことでも、今見直してみると、「なんだ、
こんなことだったのか。」と思えるはずです。教科書だけなら中学3年分でも数週間で済んでし 
まうと思います。

 (名古屋市の「ちくさ正文館(千種ターミナルビル2階)」では
  教科書が店頭販売されています。)


3.参考書

 英語を最初から体系的に復習しようとした時、中学の教科書以上に優れた教材は、まず無 
いと言えます。しかし、残念ながら教科書にも弱点はあります。
 
ひとつは、本文の内容が中学生向けのために、大人にとっては退屈に感じるものが有る、と 
いうことです。実際、発展途上国で成人対象の識字教育を実施する際に子供と同じ教材を用 
いると、知的な発育レベルの違いが原因で効果が小さくなるそうです。

 そしてもう一つ、やり直しの教材としての英語の教科書の最大の弱点は、教科書のページ数 
には制限があるため、解説が十分ではないと言うことです。このため、中学レベルの内容を一 
度理解していた人が復習に使うには問題はないのですが、中学段階でよく分からないところが
有った人にとっては、説明不足を感じさせるものになると思います。

 そのような場合には、中学生向けの参考書が良いと思います。書店に行くと『○○中1英 
語』、『□□中2英語』、『××中3英語』といった具合に多くの参考書が並んでいますが、何冊 
もやる必要はありません。英語の根幹になる部分、つまり中学で学ぶ英文法の修得ができれ 
ばいいのですから、中学3年間で学ぶ英文法を1冊にまとめたものを選べばよいと思います。

 具体的な署名をあげておくと、大ベストセラーになった大平光代著『だから、あなたも生きぬ 
いて』(講談社)で、極道の妻から弁護士になった著者の大平さんが『楽しい英文法』という本で
中学英語からやり直したことを述べておられます。この林野滋樹著『楽しい英文法』(三友社)
という本は以前から名著として知られていた本です。『だから、あなたも生きぬいて』で紹介され
てから、また店頭に沢山並ぶようになり、2011年には改訂版が出ました。

 もう一つ、納谷友一著『楽しく学べる中学英語』日栄社、という本が有りました。私は中学1年
次でのつまずきが原因で、中学後半くらいから英語がまったく分からなくなってしまいました。 
高校の時など、英語というと恐怖感しか感じませんでした。大学進学のための受験勉強を始め
たときも、高校1年レベルのことすら分からず、勉強しようにも、まったく手がつけられませんで 
した。そんな時、受験雑誌で「英語に恐怖感しか感じていない人は、これからやるしかない」と、
紹介されていた本です。

「英語に恐怖感しか感じていない、というのはまさに俺のことじゃないか。」
と思い、この『楽しく学べる中学英語』の最初のページから大学の受験勉強をスタートさせまし 
た。さすがに苦手の克服まではいきませんでしたが、生まれて初めて
「な〜んだ、そういうことだったのか。」
と、英語の授業で先生が言っていたことが少し分かりました。そして大学に合格したとき、この 
本に人生を救われたように思いました。残念ながら絶版になってしまいましたが、この本も20
数年間にわたって出版され続けた名著です。私の宝物になっている本でもあります。


4.焦らずに、そして堂々とやり直せばいい

 英会話をやるにしても中学レベルの文法の知識は必要という自覚が有ったとしても、
「いまさら中学英語なんて・・・・」
というのが、多くの方の自然な感覚ではないでしょうか。実は私も、学生時代にはコンプレック 
スを持つほど苦手だった英語を克服しようとして、就職した後に英語の勉強を始めた当初はそ
う思っていました。

 しかし、受験勉強であれほど苦労して憶えたのに、ごく基本的な事柄すら忘れていることに気
付き、愕然とすることが何度か有りました。言葉というのは、使わないといつのまにかどんどん 
と忘れてしまうもののようです。
例えば、"You were" を "you was" と言ったり、"better" を"gooder"と言ったりで、友人の英語
の先生によく笑われていました。 そのようなことを何度か繰り返して、やはり中学レベルをしっ
かりさせておかないと、たとえ会話であっても習得は難しいことがよく分かりました。
私は中1から中3までの英語の教科書とリスニングCDを買ってきました。そして焦らずに、もう
一度中学1年からやり直すことにしました。

 私はその時、既に高校の教員でした。専門教科が違うとはいえ、高校生から「先生」と呼ばれ
ている自分が中学英語をやり直しているというのは、カッコ悪い等というものではなく情けない 
感じがして、とても苦痛に感じました。中学英語を勉強しているところを生徒には見られたくな 
かったので、休みの日に図書館に行って勉強するときは、桑名市内の図書館は避け、わざわ 
ざ四日市や時には名古屋の図書館に行ったりしていました。でも、それで結局は比較的早く苦
手というレベルを克服できました。
 私がその後、英語スピーチコンテストで好成績をのこして来られたのも、現在曲がりなりにも
英語教育に関与しているのも、原点はこの時の「中学英語」に あります。

 中学英語からやり直すというのは、一見とても遠回りに見えますが、結局は一番楽な近道で 
す。もしかしたら、「そんなのカッコ悪い。」とか「いまさらこの歳になって・・・・」と思う方もおられ
ることでしょう。しかし、高校教師でありながら中学英語の復習をやっていた私に比べれば立派
なものです。
焦らずにやれば いいんです。「中学生の教材」ではなく、「日本人にとって一番良い教材」なん
だから、堂々と中 学の教科書を開けばいいんです。そしたら今まで苦手意識の有った方も、い
きなり会話からやろうとして挫折してきた人も
「なんだ、こんなことだったのか。」
と思えると思いますよ。




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